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歯が痛くなったり、しみたりする原因はむし歯だけではなく、酸味が強い飲食物や、逆流した胃酸の影響で、歯の表面が溶けてしまう「 酸蝕歯(さんしょくし) 」の可能性もあることをご存知でしょうか。近年はむし歯、歯周病に次ぐ「第3の歯の病気」として問題になっています。
歯の表面は、「エナメル質」と呼ばれる組織で覆われている。厚さ約1~3ミリしかないが、人の体では最も硬い組織で、そう簡単にはすり減りません。ところが、食生活の変化などで、エナメル質が溶けて傷む酸蝕歯に悩む人が目立つようになっています。
酸蝕歯になると、冷たい飲み物や熱い食べ物などが歯にしみる知覚過敏になることがあります。歯が薄っぺらになったり、丸みを帯びたりするほか、歯が欠けやすくなります。歯の詰め物やかぶせ物が外れ、むし歯になってしまう人もいます。
歯の見た目も悪くなる。表面の光沢を失ってくすんでしまうほか、エナメル質の下層にある淡黄色の「象牙質」が透け、黄ばんで見える場合もあります。
■pH値「5.5」以下注意
エナメル質はとても頑丈な一方、酸に弱いという短所があります。唾液には酸を中和する働きがあり、歯を守っているが、強い酸性の飲食物を口にすると、中和作用が間に合わなくなります。
具体的には、数値が小さいほど酸性度が強いことを示す「pH値」が、5.5以下になるとエナメル質が溶け始めるとされます。
レモン、グレープフルーツなどのかんきつ類や炭酸飲料、スポーツドリンクといった清涼飲料水の一部はpH3前後のため要注意。黒酢も同じような値で、健康や美容に良いからと飲み続けた人が酸蝕歯になった例も報告されています。
特に問題なのは逆流性食道炎や、 嘔吐を繰り返す摂食障害による胃酸の逆流です。強酸性(pH1.5前後)のため、歯に深刻なダメージを与えてしまいます。
治療では、多数の歯の表面全体が対象になるケースもあるため、それだけ厄介ともいえます。歯がしみる場合は、知覚過敏を防ぐ薬剤で歯の表面を薄くコーティングを行います。改善しないなら、セラミック製の詰め物やかぶせ物などで酸を遮ります。侵食が進んだ歯では、神経がひどく刺激されるため、神経を抜くことも選択肢に入ってきます。
■予防と初期発見を
現在の医療では、一度失われたエナメル質を完全に再生することはできません。手遅れになる前に予防することが重要です。だらだらと飲み食いをしてしまう人は、歯が酸に何度もさらされてしまうので、間食の回数を減らすことが大切です。酸性の飲食物をとった後は、水で口をすすいだり、お茶や牛乳を飲んだりして、口の中をできるだけ中性に近づけましょう。
ガムをかんで唾液をたくさん出すことで、口を中性に保つ方法もあります。必要以上に酸性の飲食物を避けることはないが、酸から歯を守るという意識を日頃から持つことが欠かせません。
大阪歯科大教授( 口腔(こうくう)衛生学)の三宅達郎さんは「むし歯と同様に、初期に見つけることが何よりも重要だ。自分ではなかなか発見できないので、かかりつけの歯科医をもち、定期的に受診することが大切。症状に心当たりがある人は食生活を見直し、診察を受けてほしい」と話しています。
食後は口をすすぐなど、普段のちょっとした心がけで 酸蝕歯の予防につながることもあります。改めて歯の健康も大切にしていきたいものですね。