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東京都福生市の公立福生病院で、透析治療の中止によって40歳代の女性が死亡した際の病院の対応に問題がなかったか、日本透析医学会や都が調査、検証を進めています。
そもそも透析とはどんな治療なのでしょうか?
中止はできるのでしょうか?
腎臓は、血中の老廃物や余計な水分を尿にして排出する大事な臓器です。
その機能が一定レベル以下になると末期腎不全と呼ばれ、だるさや食欲低下、吐き気といった症状が出る尿毒症や、心不全などを起こしてしまいます。失った腎臓の機能は元には戻らないため、腎臓移植や、人工的に血液中の老廃物や余分な水分を除去する透析療法が必要になってきます。
透析には主に、血液透析と腹膜透析があります。
血液透析は、血液を体外で循環させて浄化する方法で、医療機関で週3回、1回に4時間程度行うのが一般的です。
一方、腹膜透析は、腹腔内に透析液を一定時間ためておき、腹膜を通して透析液に老廃物や余計な水分を移す方法です。自宅や職場でも可能ですが、血液透析に比べて効率は低く、腹膜の劣化などで長い期間は利用できません。腹膜透析の患者は、透析患者全体の3%に満たず、通常、「透析」と言えば、血液透析をイメージすることが多いでしょう。
末期腎不全患者の生命を維持するため、絶対に欠かせない透析ですが、同学会は14年にまとめた「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」の中で、場合によっては中止や非開始もありうることを認め、その際のプロセスのあり方を示しています。
その背景にある大きな要因は患者の高齢化と言われています。同学会のデータでは、平均年齢は1985年の50.3歳から、2017年は68.4歳と高齢化が進んでいます。原因となる病気は、以前は若い人にも多い慢性糸球体腎炎が大半でしたが、2011年からは糖尿病性腎症が1位に。がんや心血管疾患など重たい病気を抱えながら、透析を受ける高齢者も増えてきました。
終末期と呼べるような段階になった時、血圧の変動など体への負担の大きい血液透析は逆に危険なこともあります。また、透析は腎臓の機能をすべて補えるわけではなく、様々な合併症が起きてくることも。どこまで続けるべきか、現場で判断に悩む場面が増え、中止や非開始の例もしばしば報告されていました。
今回の福生病院のケースで問われているのは、「透析中止に至る判断や手続きが適正だったか」ということです。
患者を死に誘導するようなことがあったのか。患者は透析中止の決定を翻して、本当に再開を望んでいたのか。それに対する病院側の対応に不備はあったのか・・・。問題点があれば明確にしたうえで、今後の透析医療に生かしていく必要があると考えられています。
メディアだけの情報では、治療を行う医師や現場の状況まではわからないことが多いものです。
医療を受ける私たち自身も情報に敏感になり、治療について、しっかりと主治医や看護師と話していきたいものですね。