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肺炎球菌感染症は、主に抵抗力の弱い乳幼児や高齢者に肺炎や髄膜炎など様々な症状をもたらし、重症化すると亡くなる恐れもあります。感染を防ぐため、きちんと予防接種を受けることが大切です。
肺炎は日本人の死因(2017年)で5番目に多く、高齢者を中心に毎年10万人前後が亡くなっています。その原因の一つが肺炎球菌という細菌による感染です。菌は、外側を分厚い膜に覆われ、体内の異物を排除する免疫機能から逃れやすい構造を持っています。主にせきやくしゃみなど、この菌を含む飛まつを吸い込んで感染します。
乳幼児の約半数、成人の3~5%には鼻やのどなどに、この菌が常在しています。全ての保菌者が発症するのではなく、抵抗力が弱まった時などに症状が表れます。かかりやすいのは免疫機能の弱い2歳未満の子どもや高齢者で、健康な若者が重症化することは少なくなっています。
口、鼻、のどなどに症状が出る「非侵襲性」と、血液や髄液にまで菌が入り込む「侵襲性」に分かれ、命に関わる侵襲性の症状には特に注意が必要です。
非侵襲性には、中耳炎や副 鼻腔(びくう)炎、気管支炎などがあります。侵襲性には、肺炎のほか、高熱が出る菌血症、全身に様々な症状が表れる敗血症、脳に感染する髄膜炎などが挙げられます。死亡の頻度は6~7%です。
子どもでは菌血症や髄膜炎が悪化し、知的障害や難聴などの後遺症や死亡につながることがあります。高齢者はインフルエンザに感染後、傷ついた気道から菌が入って肺炎を起こし、亡くなる症例が多いようです。
感染初期は風邪のような症状で、悪化して救急搬送された後、原因菌が分かることも珍しくありません。早期にたんや尿の検査、血液培養検査などで菌を特定し、症状が出ている臓器を見極めることが重要です。治療には抗菌薬が有効で、点滴や飲み薬など様々な種類があります。
肺炎球菌では、薬が効かなくなる「耐性」を持つ菌が問題になっています。手持ちの抗菌薬を自己判断で飲むと、不完全な効き目が菌に及び、確定診断を妨げる恐れがああります。感染症に詳しい医療機関で適切な診断と治療を受ける必要があります。
肺炎球菌には、97種類の型(血清型)があり、予防には、ワクチン接種が有効です。生後2か月から5歳未満には13の型に対応する13価ワクチンが定期接種化されています。生後半年までに3回、1歳の時に1回の計4回の接種が標準的となっています。
高齢者は23の型に対応した23価ワクチンへの公費助成制度があります。心臓などに重い持病がある60~64歳、65歳から5歳刻みの年齢の人が助成対象となります。公費助成は1回限りで、自己負担は市町村ごとに異なり、2000~4000円程度。2回目以降は自費で、5年ごとの追加接種が望ましいとされています。
りんくう総合医療センター総合内科・感染症内科部長の 倭(やまと)正也さんは「高齢者は、インフルエンザとの合併で毎年多くの死者が出ており、肺炎球菌ワクチンの接種率の向上が課題だ。インフルエンザワクチンとともに肺炎球菌ワクチンも検討してほしい」と話しています。
乳幼児だけでなく高齢者でも、ワクチン接種で感染症を防ぐことができます。公的助成制度を上手に活用して、予防についても意識していきましょう。