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日本人が罹患(りかん)するがんの中で最も患者数の多い大腸がん。早期発見と治療で治癒が期待できることから、検診が重視されている。人工知能(AI)を利用して大腸内視鏡検査の精度を高めるシステムを国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)内視鏡科の山田真善医師らのグループが開発した。
▽病変を検出し、医師に知らせる
大腸がん検診では、まず便潜血検査を行い、陽性の場合は大腸内視鏡検査に進むことが多い。大腸内視鏡検査では、先端に広角レンズが付いた管を肛門から挿入して大腸内をモニター画面に映し出し、がんやポリープ(前がん病変)の有無を観察する。病変が見つかれば、内視鏡に付いた器具を操作して、検査中に切除することも可能だ。
「しかし、ポリープが小さい、あるいはさほど盛り上がっていない場合など、肉眼で発見できないケースは意外に多いのです。医師の診断技術の差もあり、24%が見逃されていたという報告もあります」(山田医師)。
山田医師らが開発したのは、内視鏡検査の撮影画像をリアルタイムでAIが解析、がんやポリープだと判断すると、画像中の病変部を線で囲み、音で知らせるシステムだ。
▽5000人分の画像を学習
なぜ、AIがこんな判断をできるのか。山田医師らは、同院の過去5年間の検査画像(静止画、動画)約5000人分を集め、それを「教師」としてAIに学習させた。するとAIは、がんやポリープの画像の特徴を情報処理し、それを何段階にもわたって繰り返す。それぞれの病変の特徴や規則性、相互の関係性を見つけ出し、次に同じ病変を見たときに、がんやポリープだと答えを出せるようになるのだという。
これを用いて新たな内視鏡画像を解析したところ、がんとポリープの検出率は98%だった。がんではないのにがんと誤ってしまう頻度は、1%に抑えられた。共同開発した企業が医療機器として薬事申請を準備しているという(2020年3月時点)。
山田医師は開発のきっかけについて、「AIは物体の検出に応用されているので、がんやポリープにも使えるのではないかと考えました」と語る。
「実用化されれば、医師が肉眼で気付いた病変以外もAIの支援で観察できるようになり、検査の質が向上して受診者の大きなメリットになります」と山田医師は期待する。一方、このシステムに要する検査費用に公的医療保険が適用されるかどうかが、普及に向けた課題だとしている。