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がん細胞を効果的にたたくとして期待される粒子線治療。受けられる医療機関は限られ、治療費も高額ですが、小児がんや前立腺がんにも公的医療保険が使えるようになり、治療の選択肢として位置づけられつつあります。
放射線治療は、がん細胞のDNAを傷つけ、死滅させてしまいますが、外科手術や薬物療法と並び、がん治療の柱の一つです。手術の負担に耐えられない高齢者や、切除が難しい部位にがんができた人に適し、手術後の再発・転移を防ぐ目的でも行われます。
がん治療に使われる放射線は、主に光子線と粒子線に分かれます。光子線は電磁波の一種で、おなじみのエックス線もその一つです。一方、粒子線には陽子線や重粒子線というものもあり、陽子や炭素イオンなどの粒子を加速させ、体の中にあるがんに届くようにします。
エックス線は体の表面付近の放射線量が最も強く、次第に弱くなるが、がん細胞も突き抜けてしまいます。がんが体の奥深くにあると、正常な臓器への影響も大きく、細胞ががん化したり、成長障害が起きたりする可能性もあります。
これに対し、粒子線はエネルギーのピークを1点に絞り込めるのが利点です。がんにピンポイントで当て、周辺の臓器へのダメージも最小限に抑えられるため、治療の影響を長期にわたって受ける子どもや若年層の利点は大きいとされています。
しかし、陽子線や重粒子線を作り出すには大規模な施設が必要です。多額の建設費や維持費がネックとなり、国内では陽子線17施設、重粒子線6施設に限られています。治療も自費と保険診療との併用を認めた先進医療の枠内で進められてきました。
初めて公的医療保険が使えるようになったのは2016年4月。小児がんへの陽子線治療と、切除が難しい骨軟部腫瘍への重粒子線治療が対象でした。昨年4月には転移のない前立腺がん、咽頭・喉頭などを除く 頭頸(とうけい)部がんへの陽子線、重粒子線治療にも保険が適用されるようになりました。
立がん研究センター東病院(千葉県柏市)の放射線治療科長、秋元哲夫さんは「70代後半は手術や抗がん剤治療が難しくなる。高齢でも安心して受けられる粒子線治療のニーズは高い」と語っています。
ただ、現在も多くのがんで粒子線治療は公的医療保険がききません。患者の自己負担を減らそうと複数の医療機関が、保険適用を目指して、肝臓がんや 膵臓 がんなどで治験を進めています。
がんに対する治療方法が開発される一方で、保険がきかないなど国内の医療制度が追い付いていない現状があります。制度や法律も時代とともに少しずつ変わってきていますので、私たち自身も医療情報に敏感になり、在宅でも自分に合ったより良い治療を受けられるようにしていきたいものです。