1本のスプーンが起こした奇跡

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1本のスプーンが起こした奇跡
2019/08/26

入院などで点滴による絶食をする、食事に不安があるなど、食べる意欲がなくなってしまうことがあります。もし、ご家族が食事をしなくなったら、どうしますか?

 

脳梗塞(のうこうそく)の後遺症で、脳の機能障害と認知症がある80代の女性Aさんは、1年ほど前までは自分の手で箸を持ち、時間はかかりましたが、しっかりと食事を取っていました。

 

しかし、ある日、 誤嚥(ごえん)性肺炎で市内の急性期病院に入院することになりました。

 

入院と同時に絶食となり、3日間食事を取らずに点滴での治療が行われました。その結果、肺炎は改善して体調は回復してきました。しかし、病院給食が開始されても、Aさんはまったく口を開けようとしません。ご主人から、私に電話が来ました。

 

主治医は、「入院によって認知機能が低下して、食事そのものを忘れてしまっている状態かもしれない。早く家に帰って、いつもの環境で食事をすれば食べられるかもしれない」と言って、一日も早く退院するよう迫ります。夫は、「この状態で家に帰ってきても本当に食べることができるのだろうか?」と、不安が募った様子でした。

 

食事摂取に不安を抱えながらも、Aさんは退院することになりました。退院した日の夜も、口を開けることはなく、吸い飲みでジュースや栄養剤を飲むことしかできませんでした。

 

そこで、一本のスプーンを試してみることにしました。そのスプーンは、食事動作の自立支援を導くために開発された「KTスプーン」です。

 

介護者がその手を包み込むように握って、自分の親指をスプーンの柄の先にある丸い突起にのせます。いわば「手の二人羽織状態」です。ゼリーをすくい、Aさんの口元へスプーンを運んだところ、ごく自然なタイミングで口が開き、「パクリ」とゼリーを食べたのです。あまりにも自然だったので、大変驚きました。

 

認知機能が低下している方が、「絶食」によって食べる動作を忘れてしまうということは、医療の現場でたびたび起こります。本人にとっては、数日間も食事が提供されなかったのに、突然、目の前にスプーンが現れても、「口が開かない」、つまり体が反応しないのです。自分の手でスプーンを持つことで、その食事動作に主体性が加わり、手の動きに合わせて自然に口が開いたのです。

 

本人の口に合わないサイズのスプーンを使っていると、食べ物を口に詰め込みすぎたり、すすり食べをしたりして、食べ物を上手に口に運ぶことができません。Aさんのように、スプーンひとつで食べやすさや食べ方が変わるということもあります。ぜひ「ご本人に合う一本」を見つけていただきたいと思います。

 

(引用URL:https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20190820-OYTET50000/?catname=column_shiojun

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