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嚥下(えんげ)の力が低下していくと、「刻み食」やさらに細かい「極刻み食」という食べやすい食事が増えていきます。しかし、咀嚼をしやすくするための「刻み食」で、かえってむせてしまう方を目にすることも少なくありません。
なぜ「刻み食」やさらに細かい「極刻み食」でも、むせ込んでしまうのでしょうか?
人は咀嚼するときには、前歯で食べ物をかじり取り、口・舌・頬・顎が連動して、食べ物を噛み切ったり、すりつぶしたりします。さらに唾液と混ぜ合わせて、舌の上で飲み込める形にします。これを「食塊(しょくかい)」と呼びます。カスタネットのように、ただ顎を上下にカチカチするだけでは、食べ物を食塊にすることはできません。
例えば、「せんべい」を食べる時、口の中で処理できる量だけ前歯でかじりとり、奥歯でせんべいをつぶしながら唾液と混ぜ合わせていきます。その時、唇はしっかりと閉じて、頬は歯の側面に密着して、食べ物が歯の上に保持されるように働きます。そして、舌が食べ物を上あごに押し付けて、ゴクンと一気に食道へ送ります。
このとき、食べ物がまとまらずパラパラとしたままだと、一部が誤って気管に入ったり、食道の入り口に残ってしまったりすることがあるのです。もし、脳梗塞の後遺症などで舌や頬に麻痺があれば、無意識に行っているこれらの働きがうまく機能せず、「食塊」を作ることが難しくなります。
自在に動く舌や頬、そして食物をすりつぶせる奥歯がしっかりと機能することで、硬い食べ物も飲み込めるようになるのです。
「咀嚼や飲み込むこと」に何らかの問題がある人の食事を作る際は、きざむことよりも以下の3点に注意する必要があると考えられます。
<食事を作る際に注意すべきこと>
・やわらかさ
・まとまりやすさ(凝集性)
・歯や口の粘膜に張り付きにくさ(付着性)
例えば、とんかつよりも豚の角煮の方がやわらかいです。溶けるようなやわらかさの角煮であれば、歯茎でも簡単につぶせるため飲み込やすくなります。
パラパラのチャーハンも「あんかけチャーハン」にすれば口の中でまとまりやすく、「凝集性」が高まります。「太巻き」の海苔は板海苔ではなく、サランラップで巻いたあとに刻み海苔をまぶすことで、ひらひらした海苔が口の中に張り付きにくくなります。とろもの付いた食事も、もちの「付着性」を低下させるテクニックのひとつです。
調理環境によっては、「刻み食」を提供せざるを得ない施設やご家庭もあるでしょう。その時には、「料理をより柔らかくバラつかず、くっつきにくくする」を念頭に置いて調理してみることをおすすめします。
(引用・参考URL:https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20190220-OYTET50011/?catname=column_shiojun)